スポットライト 世紀のスクープ (字幕版)

スポットライト 世紀のスクープ

SPOTLIGHT
2015年 / アメリカ / 128分

 

監督

トム・マッカーシー

 

出演

マイケル・キートン(ウォルター・ロビンソン),マーク・ラファロ(マイケル・レゼンデス),レイチェル・マクアダムス(サーシャ・ファイファー),リーヴ・シュレイバー(マーティ・バロン),ジョン・スラッテリー(ベン・ブラッドリー・ジュニア),ブライアン・ダーシー・ジェームズ(マット・キャロル),スタンリー・トゥッチ(ミッチェル・ギャラベディアン/弁護士),ビリー・クラダップ(エリック・マクリーシュ/弁護士)

 

ストーリー

2001年のボストンが舞台。日刊紙「ボストン・グローブ」はマーティ・バロン(リーヴ・シュレイバー)を新編集長として迎えます。
新編集長マーティ・バロンは「ボストン・グローブ」で汚職や手抜き工事などを取材しているチーム「スポットライト」のウォルター・ロビンソン(マイケル・キートン)にある事件の調査をして記事にすることを指示します。
それは、カトリック司祭による子供への性的虐待事件でした。
取材チーム「スポットライト」のメンバー(マーク・ラファロ、レイチェル・マクアダムスなど)は、進行中の調査、取材を中断して、カトリック司祭児童性的虐待事件に取り掛かります。調査、取材をしていく中でカトリック教会の巨大な権力による圧力や妨害に遭いながらも、次第に事件の全容を掴んでいきますが…

 

 

ナビ

第88回アカデミー賞の脚本賞、作品賞、編集賞、助演男優賞、助演女優賞、監督賞にノミネートされ、脚本賞、作品賞で見事オスカーの座に輝きました。

 

感想・解説

ネタバレしていますのでご注意ください。

 

映画「スポットライト 世紀のスクープ」は事実に基づいた映画です。
タイトルになっている「スポットライト」が照らす教会や新聞記者を通して社会が抱える問題の光と影を描いた映画です。

 

まず最初に映画「スポットライト 世紀のスクープ」の鑑賞にあたって注意して欲しいことがあります。
映画「スポットライト 世紀のスクープ」は、第88回アカデミー賞で見事に作品賞を受賞した素晴らしい作品なんだから、さぞやハラハラしたりドキドキしたりどんでん返しがあって、やっぱり最後は真実が勝つんだ!みたいなことになって大感動する映画なんだろう、と思っていると肩透かしを喰らいます。

 

【注意点】

・キリスト教など宗教が根付いているアメリカで、聖職者であるカトリック司祭がまさかの児童に対する性的虐待が発覚したことは、アメリカでは相当にショッキングな事件だったはずです。日本ではこの事件が世間にそこまでのショッキングさでは伝わっていないと思います。つまり、映画で登場人物たちが必死で追う事件が、日本人にとっては馴染みのない事件ですので、映画にすんなりと入っていけないかもしれません。話の筋を追うだけで、字幕を追うだけでいっぱいいっぱいになるかもしれません。
少し事件の概要程度でも予習をしていくと、より楽しめると思います。
・予告編やポスターなどを見ると、いかにも真実を暴いていく社会派の感動作のようなイメージを持ってしまうかもしれませんが、全編抑制の効いた渋い映画になっています。良くない言葉で言えば、とても地味な映画です。ほぼ会話で物語が進んでいきます。もしかしたら、途中で眠くなってしまうかもしれません。
睡眠は十分に摂ってから鑑賞しましょう。ポップコーンを探る手の方に気を取られていたり、隣に座る恋人に気を取られていると、あっと言う間に早口な会話で物語は進行していきます。
・アカデミー賞受賞の文字に騙されないでください。たくさんの映画人に支持され、優れた映画として作品賞を受賞するだけの映画ですし、とても素晴らしい映画です。ただ、題材からしてデートムービーやファミリームービーのようなライトな映画ではありません。
ヘヴィな映画ではありますが、鑑賞後は宗教とかアメリカとか取材することの大変さとかを誰かと色々と語りたくなる映画ではあります。

以上のような理由から、ちょっと気軽にポップコーンでもつまみながら観ようかなという映画ではないということを理解して映画にのぞむと素晴らしい映画体験になると思います。

 
 

事件の概要を知ることが、そのまま映画のストーリーのネタバレになってしまいますが「カトリック司祭による子供への性的虐待事件」を簡単に説明しておきます。ざっとでも事件の概要を知っておくだけで、映画「スポットライト 世紀のスクープ」はより観やすくなると思います。

「カトリック教会の性的虐待事件」
カトリック教会の上層部がスキャンダルの発覚を恐れ、事件を起こした神父を他の教区へ異動させるなどして虐待問題を隠蔽してきた。強大な権力によって長年明るみに出ることはなかった。

2002年1月「ボストン・グローブ」紙によって、ボストン司教区の司祭ジョン・ゲーガン神父が30年にわたり、130人もの児童に対する性的虐待を行って訴訟を起こされたこと、またカトリック教会はゲーガン神父に対して適切な処分を行わず他の教会へ異動させただけで事件を隠蔽してきたことが報じられた。
また、同じボストン司教区の司祭であったジェームズ・ポーター神父も1950〜60年代に、125人の児童への性的虐待で問題になっていたが、ポーター神父は逮捕までされているにも関わらず、教区内を異動させただけだったことも明るみに出る。

ボストン大司教バーナード・フランシス・ロー枢機卿は、厳しい批判に晒され、2002年に辞任に追い込まれた。ロー枢機卿は神父の問題の報告を受けていたにも関わらず、適切な対応を行わなず隠蔽をしてきたのだった。

その後、事件に関する多くの報道が行われ、一部は訴訟に発展していった。
アメリカに続き、アイルランド、オーストリア、メキシコといった国々でも訴訟が起こされ、イギリス、ドイツ、オランダ、スイス、ノルウェー、オーストラリアでもカトリック教会司祭による性的虐待問題は次々に明るみになっていった。

 

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それでは、映画についての感想ですね。

映画「スポットライト 世紀のスクープ」は、仕事に忠実な人たちを描いた映画だなと思いました。

 

タイトルにもなっている「スポットライト」ですが、これには二つの意味があるように思います。
一つ目は、教会による隠蔽され続けてきた問題を記事にして明るみに出すということ。
二つ目は、一つの記事にするために地道な取材や調査をして日々奮闘している人たちがいるということ。

 

事件の真相や事実に「スポットライト」を当てようとしている地道な奮闘をしている人たちに「スポットライト」を当てる映画だと思いました。

 

真相を暴く記者チームというと聞こえは格好良いですが、実際の調査や取材は地道に一つ一つ確認をしていったり、煙たがられて話もまともに聞けなかったり、暗中模索、一つ間違えば汗水が水の泡になりかねなかったりして大変な仕事です。
普段仕事をしていて、スポットライトが当たるのはほんの一瞬だったり、一部の人だったりします。スポットライトを浴びることはなくても地道に自分の仕事に専念している人たちへの励ましが、映画「スポットライト 世紀のスクープ」の一つのテーマでもあると思いました。

映画を観た後、漠然とですが「仕事がんばろ」と、ふと思いました。

 

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先にも書いたように、映画の進行はほぼ会話(編集部内でのやりとりや取材など)によって進行していきます。派手なアクションもなければ、ハラハラするような場面もありませんので、少し退屈さを感じるかもしれません。でも、わずかな手がかりを元にじわりじわりと事件の核心へとにじり寄っていく過程は見応えがありますし、安易なサスペンス映画や御都合主義的ドラマ映画とは違い、地に足の着いた骨のある映画です。
CGや奇を衒った撮影もないオーソドックスな映画ですが、見た目重視的な画面に気が逸れない分、会話シーンでの微妙な探り合いやなかなか聞き辛いことを聞いた時の微妙な二人の間の空気などが鮮明に見えてくると思います。

 
 

問題を隠蔽して放置していた教会側は、確かに良くないことをしていました。許されることではありません。でも、被害者を生んでしまっていた一方で、救いや許しや助けを求める場所だったり、人々の拠り所でもあります。事件を起こしている神父もいますが、本当に親身になって誰かの救いになっている神父もいます。

 

映画で活躍した「スポットライト」チームや「ボストン・グローブ」紙は、事件を追い記事にすることで、問題を明るみに出すことに成功し、多くの加害者を暴き、被害者を救うことになる一方で、チームのリーダーであるウォルター・ロビンソン(マイケル・キートン)は告白します。
取材を進める中で、以前社会部にいた時に扱った今回の事件に関係する小さな記事に再会していました。その時は、ウォルター・ロビンソン(マイケル・キートン)が記事を書きましたが、小さい記事にとどまり、今までそのままスルーしてしまっていました。
あの時、扱っていた問題を真剣に捉え、さらに考えを及ばしていたら、もっと多くの被害者を助けられたかもしれない、と告白します。
無関心や怠慢が今までの被害者を生んできた一端になっていたのではないかと苦い思いを抱えます。

 

映画「スポットライト 世紀のスクープ」は、「スポットライト」チームや勇気ある記事を発表した「ボストン・グローブ」紙をいかにもなヒーローにはしていないところに好感が持てました。
悪を悪として、善を善として、御都合主義的な勧善懲悪になっていないところが良かったと思います。

 
 

自分たちの行っている事は正しいことのはずなのに、この仕事を完遂することで、家族や友人に大きな影響を及ぼしかねない状況をそれぞれの記者のプライベートでのシーンが表していたりします。

ウォルター・ロビンソン(マイケル・キートン)は、長年の友人に事件のことについて尋ねますが、友人の立場があったりして、二人の間に微妙な亀裂が入りかねない状態になります。
マイケル・レゼンデス(マーク・ラファロ)は、妻とは別居をして食事もままならない状態ですが、仕事に没頭します。
サーシャ・ファイファー(レイチェル・マクアダムス)は、とても信仰の厚い祖母が事件のことを知ったらどう思うだろうかと心配になります。
マット・キャロル(ブライアン・ダーシー・ジェームズ)は、近所に疑惑のある神父の家があり、家族や自分の子供たちを心配しています。

 

それでも、彼らは自分の仕事を全うする姿勢を変えません。
仕事とプライベート、ONとOFFを切り替えて、ステキなライフスタイルなんてものからは程遠いです。
ただひたすら自分の仕事に邁進する記者たちの姿には、きっと心を打たれると思います。
是非、アカデミー賞受賞とか余計なフィルターをなるべくフラットにして、映画「スポットライト 世紀のスクープ」にのぞんでください。

 
 

相変わらず、邦題サブタイトルの何とも間抜けな感じは何とかならないんでしょうか。
普通に原題のまま「スポットライト」で普通に良いと思うんですけどね。そのまま英語で「SPOTLIGHT」だったら素敵ですね。
映画の内容をイメージしやすいサブタイトルをつけることで、より多くの観客に興味をもってもらったり、分かりやすくしているのかもしれませんが、ダサいサブタイトルがついてることで逆に足を引っ張ってしまっているような気がするのは気のせいでしょうか。

 
 

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